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2008年06月30日

Daredevil #107

“Cruel & Unusual” #1

ミラを守ることができなかった自分の無力さから逃れるように過激なヴィジランテ行為に走るマット。そんな彼の前に、ルーク・ケイジが現れる。3人の少年を惨殺したかどで死刑判決を受け、6日後に処刑されることになっている男を救ってほしいというのだ。当初は興味を示さず依頼を断ったマットだったが…。

「Gotham Central」のクリエイター・チーム、Ed Brubaker/Greg Rucka/Michael Larkが再集合して送るストーリー・アーク。期待どおり、なかなかおもしろい。導入部のストーリーをリードしていたダコタがいきなり暴行を受けマットに主役の座を譲るあたり、Ruckaの相変わらずの女性加虐癖に苦笑い。事件の真犯人は失踪中の少年の父親だろうか。だとすると、父親はどのような手段を使って容疑者に罪をなすりつけたのか。無残な展開を期待したい。

2008年05月23日

Daredevil #106

苦い結末に終わったミスター・フィアとの対決。以来マットは何かに追い立てられるかのようにヴィジランテ活動に取り組んでいた。“彼は現実から目をそむけている。このような手荒な行いを続ければいずれ破滅を招く”と、フォギーをはじめとする友人たちは心から心配するが…。

インタルード・イッシュー。心に残るお話。とくに胃液を戻すような苦しみに耐えながらマットを思いやるベン・ユーリッチがいい(Bendis時代とは大違いだ)。重く、読んでいてしんどいのは事実だが、Ed Brubaker自身同じ思いを抱いているのではないだろうか。ベンの最後のセリフにそれが現れているような気がする。Paul Azacetaの絵はすばらしい。地面の置き方といい、服の重なりの表現といい、たしかな力があるアーティストだ。

2008年04月23日

Daredevil #104-105

“Without Fear: Part 5-6”

ミスター・フィアの奸計により殺人容疑を課せられたミラ。彼女を救うには、フィアを取り押さえ、その所業を告白させるしかない。そう決意したマットは、フィアの部下のひとり、オックスを拉致監禁し、激しい拷問を加える。しかし、その間にも、フィアの計画は最終段階へ達しつつあった…。

思わずため息をつきたくなるような展開。読み終えたあと、「Catwoman: Relentless」との共通点がいくつもあることに気づく。そういえばあのお話でも、セリーナの妹の身に二度と取り返しのつかないことが起きた。陰惨で無残な物語だが、ところどころに宝石のような美しさも。とくに終幕のマットのつぶやき、“without fear”を否定する正直な言葉には心打たれた。ミスター・フィアの恐怖ガスを強靭な精神力で克服した男に、なおも恐ろしいことがあるというのだから。

2007年11月29日

Daredevil Annual #1

ブラック・タランチュラことカルロス・ラムエルトが仮釈放の身となる。薬物売買、強請、殺人などさまざまな悪事を働いてきた彼だったが、この機会に更生する決意を固めていた。とはいうものの、所持金はわずかで働き先の当てもない。そこで彼は旧知のマットのもとを訪ねるのだった…。

好短編。“parole”という単語に“仮釈放”と“仮入国許可”のふたつの意味があることを初めて知る。何の落ち度もない老婦人を殺害したかつての仲間に憤りを感じながらも、“昔の俺は奴以上の極道だった”と反芻するあたりが苦くていい。今後、彼はパニッシャーのような道を歩むのだろうか。たとえどれほど悪人を退治しても、動機の根底に罪悪感がある限り、心が晴れることはないと思うのだが。

2007年11月13日

Daredevil #101

ミスター・フィアに投与された薬物の影響により、誤って殺人を犯してしまった妻、ミラ。彼女を苦境から救うため精一杯の努力をするマットだったが、状況はかんばしくなかった。残された唯一の手段は、ミスター・フィアを法廷に引きずり出し、真相を告白させること。必死の思いで、マットはその行方を追うのだった…。

“Without Fear”#2。おもしろい。今回は状況整理に近く、お話の大きな動きはないのだが、構成を工夫して退屈を感じさせないのはさすが。まさかあのキャラクターがからんでくるとは。あまり話題にならなかったBrian K. Vaughan/Kyle Hotzのあのリミテッド・シリーズをEd Brubakerが評価していることがわかり、ちょっとうれしい。Michael Larkの絵は表情豊か。それほど重要なキャラクターではない刑事にとても力を入れているが、渋めの初老の男を描くのが好きなのだろうか。

2007年10月21日

Daredevil #100

更生しかけていたはずのメルヴィンの、突然の凶暴化。事件の首謀者は、ミスター・フィアことラリー・クランストンだった。積年の恨みを晴らすため、彼はマットの周囲の人々に恐怖ガスを吸わせていたのだ。恐ろしいことに、マットの妻、ミラもすでにその犠牲になっていた…。

“Without Fear”#1。冷めた気持ちで読み始める。復讐ものは大仕掛けになりすぎ合理性が失われてしまいがちだし、主人公が薬物を投与され自分の恐怖心と向き合うことになる、というプロットは定番中の定番だからだ。しかし、幻覚のなか過去に経験してきたさまざまな痛みとふたたび直面するマットを眺めているうちに、引き込まれてしまった。とりわけ心に残ったのが、亡き父、ジャックと出会うくだり。過去に受けた心の傷からあることができなくなってしまったマットに対し、ジャックは“Without doing it, you can be the man without fear, but can't be a man”という意味のことを語りかける。このセリフにはやられた。これはあくまでも薬物の影響による幻覚のなかでの出来事。この言葉を発しているのはマットの心の中にいるもう一人のマットなのだ。僕はたびたびマットの酷薄さを指摘してきたが、その背景を理解しようとはしていなかった。その意味でも、Eb Brubakerにはやられた気分だ。

100号記念の付録として、第1シリーズの#90-91と制作資料が収録されている。この資料を見ると、ペンシラーのMichael LarkとインカーのStefano Gaudianoの志向の違いがよく分かる。ペンシル画制作段階でのコンピュータの使い方も興味深い。

2007年09月07日

Daredevil #99

グラディエイター暴走事件の背景が少しずつ明らかになる。ヘルズキッチンでひそかに蔓延している麻薬禍からマットの目をそらすために、何者かが彼を陥れたのだ。怒りに燃えて真相を解明しようとするマット。しかし、それは事件により深く傷ついた妻、ミラをひとりぼっちにすることと裏表だった…。

“To the Devil, His Due”#5。少々単調だが、十分おもしろい。アクションよりも会話が多い構成だが、視点を巧みに切り返すことで、Michael Larkは視覚的な緊張感を維持している。しかし薄情だなあ、マットは。Ann Nocenti期のカレン・ペイジへの仕打ちを思い出すよ。終盤の展開にはびっくり。こ、これからどうなるの?

2007年08月14日

Daredevil #98

妻ミラがグラディエイターに連れ去られる。エレクトラ、カレンと愛する人を失ってきたマットにとって、彼女を危険にさらすのは耐えられないことだった。ビルの屋上にひざまづき、彼は祈るような気持ちで耳を澄ます。“どこにいるんだ? ミラ”と…。

“To the Devil, His Due”#4。いい。暴力の前に無力な盲目の女性を、たんなる弱者とは描いていないのがすばらしい。彼女の冷静な振る舞いがなければ、マットは道を踏み外していたかもしれないのだ。ところで、カバーの隅に“Guns don't kill people, people do”という決まり文句を否定する語句が置かれているが、これはEd Brubakerの意向なのだろうか? だとすれば、彼も変わったものだ。

2007年07月20日

Daredevil #95-97

マットの滞欧中に、米国は様変わりしていた。政府の許可を受けないヴィジランテ行為は、いまや非合法とみなされるのだ。そんなおり、グラディエイターことメルヴィン・ポッターが殺人容疑を課せられる。現在の状況下で元ヴィランと関われば必要以上に人々の注目を集めることになると、マットはこの事件から距離を置こうとするのだが…。

“To the Devil, His Due”#1-3。導入部はデテクディヴ調。主人公が気乗りしないという設定のため、読者としても事件への興味がわきにくいのが難。セリフのはしばしにマットの酷薄な性格が表れているのは良い。#96のアクションシーンはファンタスティック。もしもデアデヴィルの活躍を目にする機会があったら、きっと見とれてしまうだろう。フォギー・ネルソン襲撃事件と同様、マットの能力がかえって彼を苛むというのも意地悪でおもしろい。

2007年02月15日

Daredevil #91-93

親友フォギーの命を奪ったのは誰か。復讐を誓って渡欧したマットの前に現れたのは、意外な人物だった…。

“The Devil Takes A Ride”完結。と同時に、#26以来6年にわたった混乱劇の終幕でもある。一時はデアデヴィルの世界を徹底的に破壊したように見えたこの物語が、このような感動的な結末を迎えるとは、僕はまったく予想していなかった。フォギーとマットの再会の場面では、通勤時間帯の電車の中だというのに、涙ぐみそうになってしまった。結局、死に瀕した一人の女性の最後のぬくもりが、ヴィジランテを、犯罪王を、みんなを救ったのだ。スクリプトはもちろん、Michael Larkのアートもすばらしい。彼が描く素顔のマットは、とてもハンサムだ。