バットマン:イヤーワン
米国有数の大都市のひとつ、ゴッサムシティ。当局と犯罪組織が結託し利益をむさぼるこの街に、ひとりの青年が帰ってくる。彼の名はブルース・ウェイン。プレイボーイとして知られる彼だが、その胸にはある決意が秘められていた。彼は子どものころ犯罪により両親を奪われていたのだ…。
傑作として名高い作品。すでに小プロ版とリーフを所持しているが、Blisterの新店舗を訪れたさいジャイブ版には巻末にスクリプトやラフレイアウトなどの資料が収められていることを知り、みたび購入してみた。
今回読み返して、憎まれ役のローブ市警本部長がビンテージトイ・コレクターにされていることに気づいた。彼の幼児性を強調する演出の一環なのだろう。Ffank Millerがこの趣味を嫌悪していることは明らかで、わざわざセリーナにチャーリー・ブラウン人形の首を引きちぎらせるようなことまでしている。それからサラの両親が味わった“ドイツ系移民に付きものの苦労”の内容が気になった。1930年代に離農を余儀なくされ移住先の西海岸で差別に見舞われたことだろうか? それとも1940年代に敵性国民とみなされFBIの監視下に置かれたことだろうか?
巻末のラフレイアウトは期待どおり興味の尽きないものだった。まず気づいたのが、第1章と第2章は印刷サイズで、第3章と第4章は原稿サイズで制作されていること。これは大きな変更で絵が変わってしまう危険さえあったはずだ。またラフレイアウトを見ると、対象を面でとらえ各面に明度を付与していくという、オーソドックスな概念で描かれていることがわかる。ところがインク段階ではそれらの細部を惜しみなく捨ててフォルムとコントラストの描出に専念しているわけで、思い切りの良さに感嘆した。